スタンレー電気の深紫外線技術の強み

         
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自動車ヘッドランプで培った
光学技術を活かして

スタンレー電気は、1920年の創業当時から100年間に渡り自動車ヘッドランプの製造販売を手掛け、時代のニーズに先駆けた製品を追求し続けてきました。自動車ヘッドランプは人の命に関わる重要部品であるため、高い品質・信頼性が求められますが、当社は光源(LED)からモジュール、完成品まで自社生産できるという強みを生かし、自動車メーカーのご要望を超える提案を追求し続けています。深紫外線事業においても、光源から完成品まで一貫して開発を行い、また自動車ランプ事業で培った基礎技術を生かした研究開発に取り組んでいます。ここでは特に重要とされる"熱マネジメント""光学設計"の2つの基礎技術について、自動車ランプと深紫外線技術の2つの側面からご紹介します。

熱マネジメント技術

深紫外LEDが光源として用いられている除菌製品において、LEDから放出される熱のマネジメントは、モジュールや完成品等の製品化にあたり解決すべき技術的課題の1つです。LEDへの投入電力は光と熱にエネルギー変換され、光として出力されるエネルギー以外は熱として損失します。この損失分の熱は部品の温度上昇を引き起こし、LEDの寿命を短くする原因になるため、LEDが実装される基板や周りのモジュールを含めた熱マネジメント技術は、高効率で高品質なLEDの性能を維持する重要なポイントになります。

深紫外LEDリアクターの放熱

深紫外LEDリアクターには、放熱機能を担う部品が3つあります。1つ目が、LEDに電気を投入しながら同時に熱を逃がす役割を担う放熱基板。効率よく熱を放出させるための金属製ヒートシンク。これらの2つの部品は、パソコンなどの電子機器などにも使用されています。そして3つ目が、ヒートシンクに直接風を当てることで放熱性能を高めるファンです。3つの部品の性能を最大限に引き出せるよう組み合わせることで、適切な熱マネジメントを実現しています。

深紫外LEDリアクター
深紫外LEDリアクター

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放熱部品の小型化・軽量化を実現するために

スタンレー電気では、システム全体における放熱経路を最適化するため、物として形を作り出す前段階に、伝熱光学や流体工学の理論に基づいた「理論設計」と「熱流体解析」を実施しています。部品同士の熱が伝わりやすく、外気に効率よく放熱できる仕組みをシミュレーション上で分析します【図2参照】。
自動車ランプの放熱部品には小型化・軽量化が求められます。そのため、スタンレー電気では部品を可能な限り小さく軽くしながら、性能を高める技術を追求。その技術を、深紫外LEDリアクターにも活用しています。深紫外LEDリアクターのヒートシンクにおいては、軽量化を図るために、形状やパラメータを最適化する計算手法を導入。自動車ヘッドランプで構築した熱マネジメント技術を応用して、深紫外LEDリアクターの機能特性に合う小型で軽量な放熱部品を実現しています。

図2 熱流体シミュレーションの解析イメージ

図2 熱流体シミュレーションの解析イメージ
図2 熱流体シミュレーションの解析イメージ

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光のさらなる高効率化を追求

リアクターの製品寿命や性能をより長く維持するには、LEDから発生した熱をいかに効率よく移動させるかがポイントになります。そのため、設計の初期段階では、製品全体の熱の流れやすさを数式で解いて、各放熱部品の大まかなサイズと材料を探査し、その後、3次元のモデルを用いて詳細構造の問題点の発見と改善を繰り返して最適な放熱形状を導き出しています。
LEDを含む光源の開発やヘッドランプ等の照明製品の設計において、熱マネジメント技術は重要なポイントではありますが、スタンレー電気がその先に見ているのは光の高効率化の実現です。光源、ユニット、完成品がそれぞれ別々のメーカーで開発・設計・生産される場合に比べて、スタンレー電気は、光源から完成品まで一貫して開発生産を行っていることから、様々な視点で設計を最適化し光の高効率化を追求することが可能です。

光学設計

続いて自動車ランプ製品と、深紫外LED製品における「光学設計」をご紹介します。

光学制御における反射と屈折

光は、遮るものがなければ直進しますが、光の通り道に密度の違う部分があると折れ曲がる性質を持っています。夏の暑い日にアスファルトの上が歪んで見えるのは、温度の上昇によって空気の密度が変わり、光が屈折することで起こる現象です。その性質を利用しているのが、レンズを用いた屈折の光学系です。レンズに出入りする光の入射角と出射角によって、自由に屈折角度を調整し光を曲げることが可能です。一方、リフレクターは光沢面を用いて直進してきた光を反射させることで角度を変えます。このように「屈折」と「反射」という光学系の性質を利用して「配光」*1を作ります。

*1:配光とは、届けるべき場所に必要な光を適切に配ること。

図3 ヘッドランプ光源ユニットの反射と屈折イメージ

図3 ヘッドランプ光源ユニットの反射と屈折イメージ
図3 ヘッドランプ光源ユニットの反射と屈折イメージ

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自動車ランプで培った配光技術の活用

自動車ヘッドランプでは、設計上でシミュレーションを行い、適切な部材を使用することで光を自在にコントロールしています。配光技術においては、ニーズや用途に合わせて最適な部材の種類・サイズを組み合わせて光を作ることができるのがスタンレー電気の強みと言えます。
近年のヘッドランプ技術の一つとして、ADB(Adaptive Driving Beam)の開発が急速に進んでいます。ADBは、歩行者や先行車のドライバーに対して光を制御し、必要なところに必要な光をコントロールして照射する技術で、これにより相手が眩しく感じる等の迷惑をかけず、運転者は常時ハイビームでの走行が可能になります。また、スタンレー電気は屋外照明や街路灯も扱っていますが、この分野においても「光害」(照明の設置方法や配光が不適切で、景観や周辺環境への配慮が不十分なために起こるさまざまな影響)が問題視されてきており、光を自在にコントロールし、必要とされる場所のみに最適に配光するという技術は活かされています。

深紫外線製品の配光技術

配光技術は、深紫外線製品の開発にも活かされています。紫外線は細菌やウイルスを除菌できると同時に、人体にも悪影響をもたらす可能性のある光です。また、街路灯などの可視光線と違い、紫外線の光は人間の目には見えないため、人間が意識して避けることができません。スタンレー電気は配光を最適化する技術で深紫外線の照射を自在にコントロールし、深紫外線光源の安全な活用を実現します。
その技術を深紫外線製品の一つ「深紫外LEDリアクター」で説明します。深紫外線製品の配光技術で自動車ランプ製品と大きく異なる点は、紫外線により樹脂が劣化してしまうため、樹脂レンズを使用できないことです。そのため、深紫外線製品における照射の制御にはリフレクター技術が重要になります。
例えば、深紫外LEDリアクター内部のLEDモジュールには多数のLEDを装備していますが、LEDのみの場合、LED光線が広範囲に拡散してしまい、照射を制御できません。そこで、多数のLEDに合わせてリフレクターを最適配置することで、一つ一つのLEDの配光を制御し、配管内に流れてきた水などに対して深紫外線を均等に照射、除菌できる仕組みとなっています【図4参照】。

図4 深紫外LEDリアクターの光学構造

図4 流水用UV-LEDリアクターの光学構造
図4 流水用UV-LEDリアクターの光学構造

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図5 深紫外LEDリアクター照射面

図5 流水用UV-LEDリアクターの照射面 
図5 流水用UV-LEDリアクターの照射面 

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光源からモジュール、
完成品まで一貫した設計生産体制

上記に記した「熱マネジメント」「光学設計」に加え、光源の形状やサイズ、特性なども配光に影響を与えるため、製品特性に合わせて光源からモジュール、完成品まで自社で検証しながら一貫して設計・生産できることは、私たちスタンレー電気の強みであり、今後もアドバンテージになると考えています。また、明るい光を作る繊細な色度コントロールや光の変換効率向上の技術についても注力しており、地球環境という面でもCO2や消費電力の削減などに貢献していきます。自動車ヘッドランプで培った技術力と豊富な経験値、そして一貫した設計生産体制を活かし、スタンレー電気はこれからも光の技術革新を推進し、社会に役立つ新たな光を生み出していきます。

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