LCD-ADBシステム

常に進化を続けるスタンレーの光
光に勝つ
光で感知・認識する

液晶を利用した
ADBシステムで
高解像度の光を作り出し、
夜間の交通事故を低減する。

自動車の夜間走行において、遠くの歩行者や道路形状が見えるように、ドライバーは通常走行時はハイビームを使用する事が推奨されています。しかし、実際の交通環境では状況に応じて使い分けないと、その眩しさから危険をもたらす場合があります。そうした問題を解消するために、安全・安心な運転視界を提供する「ADB(アダプティブドライビングビーム)」という機能が開発されました。ADBは、車載カメラにより対向車や先行車を検知し、相手のドライバーに眩しさ(グレア)を与えないように自動でハイビーム配光の一部を消す機能で、グレアフリーハイビームとも呼ばれます。
このADBにおいて液晶デバイス(LCD)を利用したシステムが「LCD-ADB」です。LCDを使う事により、従来のLEDを並べたADBよりもさらに細かく分割した高解像度な光を作り出すことが可能になる為、車のより近傍にまで光を照射することで、ドライバーが車の脇の歩行者などを見つけやすくなります。この結果、夜間の事故、特に歩行者横断事故の低減に貢献する事ができます。
また多くの車両にADBを搭載するためにはコスト低減が必要であり、LCD-ADBは従来同等のコストで高解像度化したADBを実現するポテンシャルがあると考えています。

常に進化を続けるスタンレーの光

キーテクノロジー

遮光範囲を任意に設定できるLCDを
シャッターに利用したADBシステム

LCDパネル事業の技術力・開発力を活かすことで実現。
他のランプメーカーではできないソリューション。

LCD-ADBのシステムの仕組みとしては、まず通常のハイビーム配光を作ります。その光の通り道にLCDを置いて、ハイビームとして使いたいときは全領域のLCDをオンにして使い、ある位置に先行車や対向車が来た場合はその位置のLCDをオフにすることで、眩しさを与えないシステムとなっています。
遮光範囲はLCDの分割によって任意に設定でき、これらは事故分析に基づいた分割位置になっています。また歩行者や看板グレアに対する配慮もしており、車載カメラが歩行者を検知して、眩しさを与えないように顔の位置の明るさをコントロールします。

遮光セグメント(分割数)

灯体ユニット : LED光源+LCD+投影レンズの組合せでADBユニットを構成

遮光の仕組みですが、ユニットには偏光板と呼ばれる特定方向の光の波を通すスリットのような構造の部品2枚があり、その間にLCDがあります。内外の偏光板は、光源側に横向きのスリットが入った偏光板があり、中央にLCD、外側にスリットの向きを90度回転させた偏光板があります。LCD自体は光を遮る機能を持たず、光を遮るのは偏光板だけです。まずLCDの後ろ側で横の光だけを通し、LCDに電圧をかけない、いわゆるオフの場合は、そのままの横の光が進むのでLCDの前側にある縦のスリットには引っかかってしまい、光が出ません。それに対してLCDに電圧をかけ、オンの状態にすると、横のスリットを通ってきた光を横から縦に90度回転させる機能が働きます。そうすると、その光は横から縦に回転し前側の縦のスリットを通れるようになります。
当社はLCDパネル事業を持っており、技術力、開発力、生産力を生かしたヘッドランプ用のLCDを実現できるため、他のランプメーカーではできないソリューションで新しい価値を生み出していきます。

苦労した課題

偏光板による光損失
低温時のLCDの特性

課題としては、LCDの基本的な特性である偏光と呼ばれる光を使う事による光損失があります。LCDを液晶テレビで使われているような単純な使い方をすると光の半分が取り出せない場合があります。これは無偏光(様々な偏光状態が混じり合った光)に対して偏光板のスリットの向きと波の方向が揃った光しか通さず、残りの光は吸収するか、もしくは反射するという性質を持っているからです。そこで、偏光板を通れなかった光をリフレクターで反射し、波の方向を90度回転させてスリットと同方向にしてから戻すことで、最初は偏光板を通れなかった光も偏光板を通れるようにする、光をリサイクルする光学系システムを構築し、光損失を防ぎました。
またLCDを構成する液晶材料はマイナス30度以下のような低温だと粘度が高くなり動きが遅くなります。その結果、乗車時にロービームを点灯しようとしてランプスイッチを入れても明るくなるまでに時間がかかります。仮に点灯までに十数秒かかるとなると、夜間に前方の状況を確認したくても、安全な視界を確保出来ない場合があります。これでは重要保安部品としての安全機能は満たせないため、LCD自体を短時間で温めるためのヒーター機能を搭載したLCDを開発し、低温で動作が遅くなってしまう問題を解決しました。

アプローチ

全ての車に搭載できる
高性能なADBシステムを世に広げる

ADBの開発当初は、今より少ない分割数から始まり、高解像度化を求めて数千個のLEDを並べて使う方式に移行してきたという開発の流れがあります。しかし、全ての車により安全性の高い高解像度ADBを搭載するためには、コスト面でも技術面でもこのLCDを利用したADBシステムが最適だと考えています。
LCDをランプで利用するための様々な課題は、LCD事業におけるスタンレー電気の技術を生かして克服しています。そして、より安全で事故低減に繋がるADBシステムを開発し、世に広げていきます